広島県 4道県で最多の新型コロナ感染

5月10日の新聞記事にて,広島県で195人が新型コロナ感染したとあった。
社会保険労務士としては初歩的な知識だが,労働基準法第26条(休業手当)で「事業主の責めに帰すべき事由により労働者を休業させたときは,平均賃金の100分の60以上を支払わなければならない。」との定めがある。つまり同条は,労働者に過失がないのに当該労働者が「会社の都合で休業させられた」ときは,使用者に対し,労働者の生活保障として「平均賃金の6割相当額」を労働者に支払わなければならない旨を定めているわけだ。

ではこの新型コロナに感染した場合はどうであろうか?
結論から言うと,新型コロナは「新型インフルエンザ等対策特別措置法の一部を改正する法律」により対象疾病として追加されたため,新型コロナに感染した従業員を休業させたとしても「事業主の都合による休業」にはあたらず,したがって,労働基準法26条による休業手当を支払う必要はない,とされている。また,濃厚接触者も同様で,各都道府県の保健所より「濃厚接触者」とされたときは新型コロナウイルスに感染した者に準じた取り扱いを受けるため,これらの者を使用者が休業させたとしても労基法で定める休業手当を支払う必要はない。

では,新型コロナウイルスに感染したわけではなく,また濃厚接触者でもないが,たとえば「濃厚接触者に接触したことがあるが,濃厚接触者ではない者」を使用者の判断で休業させる場合は労基法第26条による休業手当を支払う義務があるのか?というのが問題となってくる。
これについては,保健所から「感染者または濃厚接触者」と判断されたわけではなく,事業主の判断で安全をとって休業させるわけだから労基法第26条による休業手当の支払い義務がある,とされている。経営者にとっては納得できないかもしれないが,これが現状の法令上の解釈・限界となっている。

従業員やその家族の命を守るためのやむを得ない判断で休業させるのに,こんなケースに対してまで休業手当を支払わなければならないのは,専門家の私としても納得がいかない。