安全配慮義務と不法行為に基づく損害賠償請求の違いを簡単に解説

近年,セクハラやパワハラが明確に不法行為となる法改正がありましたが,今回は安全配慮義務と不法行為に基づく損害賠償請求権について簡単に話してみようと思います。

例えば,従業員がある社員に対してパワハラをしたとしましょう。

そうすると,被害者社員は加害者に対し,不法行為に基づき消極的・積極的損害について損害賠償請求することができます。この場合の消滅時効は損害及び加害者を知った時から3年,行為の時から20年間とされています。但し,人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効は3年のところ5年に延長されます。

一方で安全配慮義務違反というのは,使用者が従業員が安全に業務遂行できる環境づくりを怠った場合に問われる債務不履行責任で,従業員は当該義務を怠った使用者に対し,当該債務不履行を理由とする損害賠償責任を追及できます。この場合の消滅時効は権利を行使できることを知った日から5年,権利を行使できる時から10年とされています。但し,人の生命又は身体を害するものについては,10年のところ20年に延長されます。

このように,不法行為による損害賠償請求と安全配慮義務違反による損害賠償責任は,それぞれ消滅時効が異なってきます。また場合によっては,請求の相手も異なってきますし,損害賠償請求するにしても,不法行為と安全配慮義務違反とではその性質が変わってもきます。

ただ通常,たとえば部長が部下にパワハラをした場合などは,被害者は使用者に対して使用者責任(民法715条)責任を追及し,加害者と使用者ともに損害賠償することになりますね。

本来はもっと詳しく解説したいのですが,そうすると相当な長文となってしまうので,この程度としておきます。またいずれ解説しましょう。