管理監督者の基準
最近,関与先から相談があったので,社会保険労務士の知識としては基本中の基本について述べてみたい。
まず労働基準法第41条に定める管理監督者に該当すれば労働時間,休憩及び休日の定めが適用除外になるので,時間外や休日に勤務しても「時間外手当」はもちろん,「休日出勤手当」を支払わなくとも労働基準法24条(賃金支払5原則)や同法37条(割増賃金支払義務)に違反しない。
そして管理監督者として取り扱うことができる労働者とはどのような職位等にある者なのかについて,これを行政通達にある原則論を読み解くと,以下の①から③を満たせば「管理監督者」に該当することになっている。
- 原則論として,労働時間規制になじまない態様にある者で,企業内での『管理監督者の範囲』は限定的とすべき。
- 職位の名称にとらわれることなく,職務内容,責任と権限,勤務態様に着目して管理監督者を選定すべき。
- 基本給,役職手当及びボーナスについて,一般労働者に比して優遇措置が設けられていること。
- スタッフ職(例えば,担当部長など)についても,①から③に該当するなら管理監督者として取り扱うことが可能であること。
ちなみに多くの中小企業では,私の経験則上,「課長」という役職がつけば自動的に残業手当を付けない等の実態を散見する。
そして,賃金や与えられた権限を確認すると,労働基準法第41条に定める管理監督者には到底該当しないことがほとんどだ。
これも日本特有の企業風土なのかもしれない。
以下に行政通達を記載しておきます。
[昭和63年3月14日基発150号]
- 原則
労基法に規定する労働時間,休憩及び休日等の労働条件は,最低基準を定めたものであるから,この規制の枠を超えて労働させる場合には,法所定の割増賃金を支払うべきことは,すべての労働者に共通する基本原則であり,企業が人事管理上或いは営業政策上の必要等から任命する職制上の役付者であれば全てが管理監督者として例外的取り扱いが認められるものではないこと。
- 適用除外の趣旨(労働基準法第41条により労働時間,休憩及び休日の定めが除外されることの趣旨)
これらの職制上の役付者のうち,労働時間,休憩,休日等に関する規制の枠を超えて活動することが要請されざるを得ない,重要な職務と責任を有し,現実の勤務態様も,労働時間等の規制になじまないような立場にある者に限って管理監督者として41条による労働時間,休憩及び休日の適用除外が認められる趣旨であること。
したがって,その範囲はその限りに限定しなければならないものであること。
- 実態に基づく判断
一般に企業においては,職務内容と権限等に応じた地位(職位)と経験,能力等に基づく格付(資格)とによって人事管理が行われている場合があるが,管理監督者の範囲を決めるにあたっては,係る□及び職位の名称にとらわれることなく,職務内容,責任と権限,勤務態様に着目する必要があること。
- 待遇に関する留意
管理監督者であるか否かの判断に当たっては,上記のほか,賃金等の待遇面についても無視しえないものであること。この場合,定期給与である基本給,役職手当等において,その地位にふさわしい待遇がなされているか否か,ボーナス等の一時金の支給率,その算定基礎賃金等についても役職者以外の一般労働者に比し優遇措置が講じられているか否か等について留意する必要があること。なお,一般労働者に比べ優遇措置が講じられているからといって,実態のない役職者が管理監督者に含まれるものではないこと。
- スタッフ職の扱い(部下を持たない管理職等のこと)
労働基準法制定当時にはあまり見られなかったいわゆる「スタッフ職」が,本社の企画,調査等の部門に多く配置されており,これらスタッフの企業内における処遇の程度によっては管理監督者と同様に取り扱い,法の規制外においても,これらスタッフ職の地位からして特に労働者の保護に欠けるおそれがないと考えられ,かつ,法が管理者も含めていることに着目して,一定の範囲の者については,労働基準法第41条による管理監督者の該当者に含めて取り扱うことが妥当であると考えられること。